2019年9月号 [Vol.30 No.6] 通巻第345号 201909_345003

国立環境研究所夏の大公開報告(その1) Dr.***ンジャーと考える防災と地球温暖化

  • 地球環境研究センター 交流推進係(国立環境研究所一般公開実行委員) 広兼克憲

夏休み最初の土曜日となる7月20日に開催し、これまでで最多の6,165名の入場者を記録した国立環境研究所「夏の大公開」での地球環境研究センターの企画について、今月号、来月号にわたって報告したいと思います。

昨年度は豪雨災害の恐ろしさを示す水墨画を展示し、刻々と迫り来る地球温暖化の影響を訴えました(「恒例:国立環境研究所夏の大公開—地球環境研究センターの暑く熱い日—」地球環境研究センターニュース2018年10月号)。今年は「Dr.***ンジャーと考える防災と地球温暖化」と題し、つくばを拠点に活動する防災科学者Dr.***ンジャー(敢えて伏せ字を使い、ミステリー的雰囲気を演出しましたが、つくばでは結構有名な方です)をお招きし、そのわかりやすいパフォーマンスを通じて、今後の地球温暖化への対応を学ぶ新企画を実施しました。

図1研究所内各所に掲示されたポスター。さあ、Dr.***ンジャーは研究所のどこに現れたのでしょうか???

他の企画展示と異なり、Dr.***ンジャーとはどんな人なのか、そして、どこでどのような実験をするのか、その詳細を直前まで公開せず、所内2箇所の登場予想マップだけを示してぶっつけ本番で行いました。それが吉と出たのかわかりませんが、4回とも子どもたちで大盛況、集まった方々の笑顔が印象的な人気イベントとなりました。

このイベントの目的は、地球温暖化の影響のリアルな体験を子どもたちにしてもらうことにありました。

地球温暖化が進むと豪雨が起こりやすくなり、土石流などの災害に見舞われる可能性が高まります。Dr.***ンジャーは、独自に開発した軽量大型土砂崩れ体験シミュレータを使って、子どもたちに土石流の勢いを体感してもらうことから始めました。土砂に模した細かい発泡スチロールが巻き上がりながら目前に迫ってくるのを、ビニールに顔を押し付けて観察する子どもたちの歓声が印象的で(写真1)、大人たちも工夫された見せ方に納得・ガッテンでした。このような発泡スチロール粒の動きは、なだれや土砂崩れが自分に迫ってくる感覚に近いのです。これにより仮想的になだれや土砂崩れが迫ってくる感覚を体験できます。

写真1巨大ビニール袋と発泡スチロール粒による土砂崩れ体験(本館I中庭)

さらに地震による高層ビルの揺れや地盤の液状化、山地で起きる落石のメカニズムをわかりやすく解説し、子どもたちに災害に関心を持ってもらうための手作りツールを駆使して視覚に訴えました。災害と地球環境問題への対応には「日頃からの備え」が不可欠という共通点があり、それをきちんと理解・納得して備えることがとても大切です。

写真213mの高さにもなる竿を使った高層ビル振動実験(本館I中庭)

写真3地球温暖化研究棟前で子どもたちに落石パフォーマンスを披露

Dr.***ンジャーの実験とパフォーマンスは我々の成果普及や広報啓発の方法開発に非常に参考になるものでした。地球温暖化の進行に伴い、ますます自然災害のリスクが高まります。防災と地球温暖化対策は今後もますます連携が必要になってくると思います。

今後もこのような機会を設けて、さらにこれらの問題に関心を持ってもらいたいと考えています。

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