2017年8月号 [Vol.28 No.5] 通巻第320号 201708_320003

講演会「地球温暖化とわたしたちの未来」

  • 環境省京都御苑管理事務所長 田村省二

1. はじめに

2017(平成29)年5月31日(水)、13時30分から15時過ぎまで、国立研究開発法人国立環境研究所地球環境研究センター気候変動リスク評価研究室長の江守正多氏から「地球温暖化とわたしたちの未来」と題するご講演を頂きました。

この講演は、今年が、1997年に京都の地で地球温暖化対策に関する人類史上初の国際的な約束「京都議定書」が誕生して20年目であり、それを記念して、国立環境研究所と当所が共同で実施したものです。

本講演会には、平日の日中にもかかわらず、市民、環境活動団体、行政関係者、学生など60名を超える方々にご参加いただきました。

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写真1講演会場(閑院宮邸展示資料館レクチャーホール)の様子

2. 閑院宮邸展示資料館について

京都御苑は、JR京都駅から見て、北側約4㎞の位置にあり、地下鉄烏丸線に乗り換えると10分程度で到着します。市街地の真ん中に広がる南北1,300m、東西700mの長方形をした、緑豊かな憩いの場です。閑院宮邸展示資料館は、私たちの事務所に併設する形で、御苑の南西端に立地しています。

みなさん、「閑院宮」という名前をはじめて聞かれた方は多いのではないでしょうか。広辞苑(第六版)を見ると「四親王家の一つ。東山天皇の皇子直仁(なおひと)親王に始まる。新井白石の建議に基づき、将軍家宣の上奏により、1710(宝永7)年創立。1947(昭和22)年まで7代にわたり存続した。」とあります。天皇系図を見ると、直仁親王から8代あとの今上天皇まで、まっすぐ繋がっていることが分かります。この閑院宮邸は、1877(明治10)年まで使用されていました。その後は華族会館や裁判所として使用され、明治16年には旧宮内省京都支庁が置かれました。東門の正面にある現在の建物は、宮内省の支庁開設の際に新築されたものですが、100年以上の歳月を経て老朽化が著しかったため、10年ほど前に大改修されました。その際、京都御苑の歴史や自然についての情報提供機能が充実され、また、周囲のお庭も修復されました。大改修前のことですが、京都迎賓館の建設計画が検討される中で、閑院宮邸の建物は、代替施設のグラウンドを整備する計画が持ち上がり、一時は解体されるかもしれませんでした。しかし、建物の歴史的価値を重んじる専門家の意見を尊重し、修復・保存することになりました。

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写真2閑院宮邸展示資料館

3. 講演会「地球温暖化と私たちの未来」

冒頭、「科学者が予想する2050年の天気予報」と題する動画(江守室長の他、気象予報士・井田寛子さんが登場)が上映され、2050年には京都の紅葉がクリスマス頃にずれ込むことをはじめ、参加者の間で将来の地球温暖化による影響が、映像を通じ共有されました。

江守室長の講演では、前半、地球温暖化の現状、主要なリスクとそれに対する適応策・メニューを解説頂きました。

後半、「脱炭素化」はイヤイヤ努力して達成できる目標ではなく、社会の「大転換(transformation)」が起きる必要があることを、たばこの分煙革命に擬えて熱く語って頂きました。そのため、講演は予定時間を若干オーバーしました。

講演後、複数の参加者から、地球温暖化と防止方策に関するご質問を頂き、江守室長は、すべての質問に丁寧に答えられ、みなさん、ご納得された様子でした。

4. おわりに

本講演会の事前に、江守室長の著書を数冊読ませて頂きました。実際にお会いしてお話しさせて頂いた時に、江守室長は、4年前の新書(『異常気象と人類の選択』角川SSC新書)を執筆した頃と少し考え方が変わってきたとおっしゃっていました。いまだに地球温暖化が嘘だと主張する米国のトランプ大統領が、パリ協定から離脱するという社会状況の変化を踏まえ、私たちがどのように考え、どのように行動すべきかを、より多くの方が、最新の科学的な根拠に基づき正しく理解できるように、新たな書籍で紹介して頂くことを期待します。次世代のためには、温暖化防止対策を怠ることは絶対にできません。また、執筆だけではなく、ご講演や動画作成も是非継続して頂きたいです。

私どもは、京都御苑の地の利を活かし、今後とも、国立環境研究所とタッグを組んで、地元での環境保全活動に役立ちたいと思います。継続は力です。

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地球環境研究センター ニュース編集局
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