2017年7月号 [Vol.28 No.4] 通巻第319号 201707_319005

四日市公害と環境未来館開館2周年記念 江守正多氏講演「地球温暖化と私たちの未来」

  • 四日市公害と環境未来館 館長 生川貴司

1. はじめに

2017年3月20日に、当館の開館2周年を記念して、国立環境研究所地球環境研究センター気候変動リスク評価研究室長の江守正多氏から「地球温暖化と私たちの未来」と題したご講演をいただきました。

この講演は、3月18日に開催した四日市公害[注]の語り部による講演とあわせ、開館2周年記念事業の一環として企画させていただいたものです。

江守室長からは、地球温暖化の影響と私たちが取りうる対策についてお話しいただき、市民をはじめ環境活動団体や行政関係者、学生など80名を超える方々に参加いただきました。

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写真1講演会場内の様子(聴覚障がい者への情報保障として手話通訳と要約筆記を準備しました)

2. 四日市公害と環境未来館について

当館は、四日市公害の歴史と教訓を次世代に伝えるとともに、環境問題を未来志向で考えるための施設として2015年3月、市立博物館・プラネタリウムに併設する形で開館しました。開館以来、小中学生をはじめ国内外から13万人を超える方々にご来館いただいています。

館内では四日市の古代からの歴史を展示し、その中で公害が発生した時代背景や被害の状況、その後の官民一体となって公害を乗り越えてきたことを一連のストーリーとして展示しています。

また、四日市公害の体験を語り継ぐ語り部や展示室の解説員による説明、50名を超える方々の証言映像を見ていただくことで、当時を知らない世代にも理解していただけるような展示や解説に努めています。

さらに、宇宙から見た地球という視点も持つプラネタリウムも一緒にご覧いただくことで、地球規模で未来の環境を考えていただくことができるのも特徴のひとつです。

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写真2館内を疑似体験できるバーチャルツアーサイト(英語、中国語、韓国語対応) http://www.city.yokkaichi.mie.jp/yokkaichikougai-kankyoumiraikan/vt/miraikan_jp.html

3. 記念講演「地球温暖化と私たちの未来」

江守室長の講演では、地球温暖化の現状と、私達が今後も温室効果ガスの排出を続けた場合の海面上昇や食糧不足、生態系の損失などが起こるリスクについて解説していただきました。また、地球温暖化により深刻な被害を受けるのは、途上国や弱い立場の人々であり、さらには将来世代にも影響が及ぶ問題であるという点にも言及されました。

後半では、世界のCO2排出量削減の必要性と、我々自身がこれからの社会をどのように選んでいくかについて触れられました。そして我々に、今どのようなことを考え、周りに何を伝えていかなくてはいけないのかと問いかけられ、これからも地球温暖化問題に興味を持ち続けてほしいと締めくくられました。

講演後、参加者からは、「地球温暖化対策には社会の大転換が必要との指摘に、分煙を例に出された説明が、私たちの未来に期待を込めた非常にわかりやすいお話しだった。」との感想をいただきました。

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写真3江守室長の講演の様子(地球温暖化の現状と将来のリスク、CO2排出削減の必要性についてわかりやすく解説されました)

4. おわりに

今回の講演では、参加された方々が、地球温暖化という現在進行形の課題について、自分のこととして関心を持っていただくきっかけになったと考えています。

当館は、四日市公害の教訓を生かすこと、さらには地球温暖化をはじめとした環境問題を多くの方々に伝え、考えていただくことで、未来に豊かな環境を引き継いでいくという使命を担っており、今年度は、地球温暖化等について、より身近な問題として考えてもらえるような映像コンテンツを追加する予定です。

最後になりましたが、ご講演いただきました江守室長はじめ関係者の皆様に深く感謝申し上げるとともに、国立環境研究所地球環境研究センターの一層の発展をお祈りいたします。

脚注

  • わが国は、戦後復興から高度経済成長を成し遂げる過程で、さまざまな公害問題に直面した。特に四日市市では、国の政策のもと、1960年代に石油化学コンビナートが本格的に稼働すると、大気汚染を原因とする呼吸器系疾患の急激な増加、四日市港地先海域でとれる魚が油くさいなどの四日市公害と言われる深刻な公害問題が発生した。(平成27年度第1号四日市公害と環境未来館年報より)

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