2017年6月号 [Vol.28 No.3] 通巻第318号 201706_318001

全国環境研協議会酸性雨広域大気汚染調査研究部会事務局の任を終えて

  • 熊本市環境総合センター 濱野晃

1. はじめに

地方自治体の環境研究機関(地方独立行政法人及び財団を含む。以下「地環研」という)で組織する全国環境研協議会(以下「全環研」という)の実働的組織として設置されている部会のひとつである酸性雨広域大気汚染調査研究部会では、統一的な手法による酸性雨全国調査の実施要領等の策定、結果の収集・解析及び報告書の作成を行っています。

当部会は、部会長、理事委員、全環研の各地方支部から選任された支部委員、地環研に所属する研究職員の有志である委員及び酸性雨を始めとする大気環境の専門家である有識者により構成されています。

全国酸性雨データベースの詳細は、http://db.cger.nies.go.jp/dataset/acidrain/ja/index.htmlを参照してください。

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写真1酸性雨広域大気汚染調査研究部会 平成28年度メンバー

2. 第5次酸性雨全国調査の総括について議論

平成29年2月1日(水)〜2日(木)の2日間にわたり、国立環境研究所において平成28年度第2回の部会会議を開催しました。会議には34名の出席を得て平成27年度酸性雨全国調査報告書の作成状況や平成29年度酸性雨全国調査の実施方針等について、報告や意見交換等を行いました。

酸性雨全国調査は、平成3年度から3ヶ年にわたって実施した第1次を皮切りに、3〜7年ごとに新たな調査目的や調査項目を取り入れながら、20年以上の長きにわたり継続実施しています。今回の部会会議では、平成27年度酸性雨全国調査報告書に第5次調査(平成21年度〜平成27年度)全体を通してのまとめを盛り込むのか否か、盛り込むとしてどのような内容にするのかといった点に多くの時間を割いて議論が進みました。

酸性雨全国調査は全環研会員機関の御理解と御協力により成り立っており、様々な事情でこの調査への参加が難しくなった機関もあります。調査地点数は年度ごとに変動し、少しずつですが年々減少傾向にあることから、測定データ解析・報告書執筆をされている委員の方々からは、複数年にわたる結果のとりまとめに苦慮している旨の報告がありました。

それでも、2日間の議論の中でいくつかのアイデアが示され、平成29年度内の報告書完成と公表に向けた道筋が付いたのではないかと思っています。

また、今回の会議では平成28年度から開始している第6次酸性雨全国調査に関する議論もありました。第6次調査からの大きな変更点であるフィルターパック法による乾性沈着調査について、部会としては、より詳細な結果を得たいとの立場からこの新たな手法への移行を推奨しているものの、移行が難しい機関が乾性沈着調査から手を引いてしまっては測定データの継続性が得られないとの観点もあり、どのように折り合いを付けるかについて議論を行いました。その結果、(1) 部会として、新手法への移行を推奨するとの立場は維持する、(2) 平成28年度の実施状況について手法ごとの機関数を情報提供して各機関の判断の一助とする、こととなりました。

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写真2, 3平成28年度第2回酸性雨部会会議の様子

3. 部会事務局としての悪戦苦闘

当部会の部会長及び事務局は、全環研の各地方支部が2年ごとに持ち回りで務めることとなっています。平成27・28年度は、九州支部に所属する熊本市環境総合センターの所長が部会長を務め、当センター職員3名で事務局の実務を進めました。

当センターは酸性雨全国調査には第1次から参加しているものの、支部委員や委員として関わったことはなく、事務局職員は酸性雨調査に精通しているというわけではありません。したがって、部会会議での専門的な議論を理解し、整理することに非常に苦労しました。さらに、平成28年度からの第6次酸性雨全国調査へのフェーズ移行に際して調査実施要領の見直しや追加資料等の作成をしなければなりませんでした。平成27年度の部会会議後も継続審議の取扱いとなり、部会委員等との連絡調整を年度末まで図りながら何とか取りまとめ、かろうじて平成28年度酸性雨全国調査への参加機関募集に間に合わせることができましたが、とても焦っていたことをこの原稿を執筆しながら思い出しています。

一方、事務局の業務は年2回の部会会議開催や酸性雨全国調査に係る取りまとめの他にも、環境省が主催する酸性雨精度管理調査への参加の募集、全環研広報部会が出版している全国環境研会誌への酸性雨全国調査報告書の投稿などがあります。事務局職員3名はいずれも技術系職員であり、事務的な業務に不慣れな面も多かったことから、平成27年度当初は、前任の事務局である青森県環境保健センターに何度もお尋ねしながらの業務遂行でした。また、平成28年度から全国環境研会誌が完全に電子ジャーナル化されましたが、図表をカラーで公表できるようになったことなどのメリットがあった一方、それ以前とは原稿の作成方法が変わり、試行錯誤の中で事務局が行う作業が増えることとなりました。執筆委員の方も戸惑われておられましたが、私も非常に苦労して、何とか締切りまでに完成原稿を広報部会に提出することができました。

このように、部会活動の様々な転換時期に事務局を務めていたことに加え、平成28年4月に発生した熊本地震による影響で、事務局を担当していた職員の一人が、震災関連業務との兼務を命じられ、しばらくの間、当センターの業務から離れました。こうしたことから、平成28年度中は、事務局業務を停滞させてしまった面があったかと存じます。関係機関や部会委員等へご迷惑をおかけしてしまったことをこの場をお借りしてお詫びいたします。

なお、平成29年度からの2年間は、中国・四国支部の愛媛県立衛生環境研究所が当部会の事務局を務められることとなります。

4. おわりに

平成28年4月に発生した熊本地震の直後には、全環研会員機関や当部会関係者等多くの方々から暖かいメッセージをいただきました。改めて御礼申し上げます。

当センターの被災状況としては、施設や一部の機器に破損を生じましたが致命的なものとはなりませんでした。ただ、発災後しばらくの間は災害対応としての飲用井戸の緊急検査を中心に分析業務を実施しており、定例業務の一部(PM2.5の春季成分測定など)を実施することができませんでした。また、熊本市全体として震災関連業務・復旧復興業務を最優先で行う方針が示され、年度途中での兼務辞令や人事異動により当センターの人員も削減され、地震前と同様の業務を遂行することが困難となりました。

他の自治体の地環研においても、行財政改革を推進する時勢の中で、予算の確保や研究に長けた人員の育成に苦慮されているところと存じます。そうした状況にあっても、酸性雨全国調査の参加機関・調査地点は、若干の減少傾向はありながらも一定の数を保っており、20年以上の長きにわたりモニタリングを継続できていることは素晴らしいことだと感じています。

地環研及び関係機関におかれましては、今後とも引き続き、当部会の活動に対する格別の御理解と御協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

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地球環境研究センター ニュース編集局
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