2016年8月号 [Vol.27 No.5] 通巻第308号 201608_308006

酒井広平講師による「検定試験問題を解いてみよう」シリーズ 30 地球温暖化とヒートアイランド —3R・低炭素社会検定より—

  • 地球環境研究センターニュース編集局

【連載】酒井広平講師による「検定試験問題を解いてみよう」シリーズ 一覧ページへ

3R・低炭素社会検定は、持続可能な社会の実現のため、3Rや低炭素社会に関する知識を活かして、実践行動を行う人を育てることを目的としています。【3R・低炭素社会検定 低炭素社会分野試験問題解説集「はしがき」より】

検定試験問題から出題します。

問89都市部のヒートアイランド現象を緩和するために、私たち一人ひとりができることとして、最も不適切なものはどれか?

初級レベル

正答率 90%

  • 冷暖房の負荷を下げる
  • 買い物・通勤には、自転車や公共交通手段を使う
  • 電気製品を買い替えるときは、省エネ型のものを選ぶ
  • 水分補給や服装の工夫で熱中症対策を行う
ヒント
出題の趣旨はヒートアイランドへの適応方法ではありません。
答えと解説

答え: ④

問題は「ヒートアイランド現象の緩和策」を尋ねていますから、④は「熱中症対策」であり、明らかに不適切(誤り)です。出題の趣旨を誤解、混乱しなければ、比較的容易に正解できる問題です。

  • *正答率は第5回3R・低炭素社会検定受験者のものです

問90都市部ではヒートアイランドの影響もあり、35°C以上の猛暑日が増え、熱中症の年間死亡者が増加した。特に暑い夏であった2010年の日本における熱中症による年間死亡者数について、最も適切なものはどれか?

上級レベル

正答率 21%

  • 約5人
  • 約50人
  • 約170人
  • 約1700人
ヒント
正答率が低いように驚きの数字です。
答えと解説

答え: ④

暑い夏であった2010年の日本の熱中症による年間死亡者は約1700人まで達しました(厚生労働省調べ)。そしてその約8割が65歳以上であり、発生場所は家が最も多いという結果でした。それ以前の1995〜2009年の各年の年間死亡者数は150〜900人程度で推移していました(そのうち最も多かったのは2007年の約900人)。なお、2010年に熱中症で救急搬送された人は5万4千人に上っています。

この暑い夏であった2010年の夏(6〜8月)の平均気温がどれだけ高かったかというと、平年値と比べて東日本でわずか1.5°C、西日本で0.8°C高いだけです(気象庁データによる)。また、2010年同様に暑い夏であった2013年の夏は、高知県四万十市で最高気温の歴代1位を塗り替えた41.0°Cや甲府で歴代5位の40.7°C、東京都心(千代田区大手町)で30°Cを割らない熱帯夜を記録した年でしたが、夏の平均気温は平年値と比べて東日本で1.1°C、西日本で1.2°C高いだけでした。今の平均気温より2°C上昇するということがどれだけ大変なことなのか考えておく必要があります。

  • *正答率は第6回3R・低炭素社会検定受験者のものです

問91IPCC第5次評価報告書第1作業部会報告書(自然科学的根拠)の内容の説明として、最も不適切なものはどれか?

中級レベル

正答率 75%

  • 世界平均気温は、1880〜2012年の間で0.85°C上昇した
  • 人間活動が20世紀半ば以降に観測された気温上昇の主な要因であった可能性が「極めて高い」(95%以上の確率)
  • 京都議定書などの国際的な排出削減努力により、近年大気中のCO2濃度は安定化傾向にある
  • 緩和策を実施しない場合、今世紀末(2081〜2100年)の世界平均気温は現在(1986〜2005年の平均)に比べ2.6〜4.8°C上昇する可能性が高い
ヒント
世界のCO2排出量は年々増加しており、近年は大気中のCO2濃度が400ppmを超えたということが、話題なっています。
答えと解説

答え: ③

2013年から2014年にかけて、順次、IPCC第5次評価報告書が公表されました。2013年9月に報告された第1作業部会(自然科学的根拠)報告の結果によると、世界平均気温は、1880〜2012年の間で0.85°C上昇し、人間活動が20世紀半ば以降に観測された気温上昇の主な要因であった可能性が「極めて高い」(95%以上の確率)とされており、緩和策を実施しない場合、今世紀末(2081〜2100年)の世界平均気温は現在(1986〜2005年の平均)に比べ2.6〜4.8°C上昇する可能性が高いとされています。

なお、世界のCO2排出量は京都議定書発効後も増加しており、近年の大気中のCO2濃度も増加を続けています(最近10年の増加率は約2ppm/年)。

2014年3月には気象庁からこの報告の要約にあたる「政策決定者向け要約」の日本語版も公表されています。

  • *正答率は第7回3R・低炭素社会検定受験者のものです
  • 出典:3R・低炭素社会検定(http://www.3r-teitanso.jp)低炭素社会分野試験問題解説集

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