2016年4月号 [Vol.27 No.1] 通巻第304号 201604_304008

【最近の研究成果】 Twitterを活用した都市熱波リスクの分析

  • 地球環境研究センター 特別研究員 村上大輔

地球温暖化が進行する中、熱波への対策はその重要性を増している。都市熱波のリスクへの対策を効果的に行うには、都市気候の状況を把握するとともに各人の熱波に対する脆弱性を把握する必要がある。人々のつぶやき(tweet)をリアルタイムで収集・公開するツールであるTwitterは、個々人の健康状態や心理状態を推し量る上で役立つ可能性がある。しかしながら、Twitterの熱波リスク対策への応用はおろか、tweetと都市気候との関連を分析した研究ですら筆者らの知る限り存在しない。

そこで本研究では、Twitter(本分析では株式会社ナイトレイ提供のデータを活用)を活用した熱波リスク対策への第一歩として、「暑い」の類語を含むtweet(heat-tweetと呼ぶ)と気温の関係を分析した。その結果、例えば2012年8月の場合であれば、8月10日前後の気温が低下した期間にheat-tweetの頻度が減るなど、気温とheat-tweet頻度に一定の関連がみられた。また、heat-tweetは、気温自体よりも気温上昇により強く影響されているとの結果も得られた。次に、以上の結果を応用することで、heat-tweetを気温の空間補間(マッピング)に応用した。それにより従来の観測データに加えてheat-tweetも考慮することで東京都心における昼間の急激な気温上昇が精度よく捉えられるとの示唆を得た。

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tweetと気温の関連を分析するための研究の概要 [クリックで拡大] 本研究では、まず“暑さ”に関連するワード(暑い、寝苦しいといった形容詞、及び真夏日、熱中症、汗といった名詞を含む計38ワード)を含むジオタグ付きツイートである“heat-tweet”を抽出した(図中左上)。次にheat-tweetと気温または気温変化の関連を、特に時間変動に着目しながら分析した(図中右上)。最後に、heat-tweetを東京都における気温の時空間マッピングに応用した(図中下)

本研究の論文情報

Participatory sensing data “tweets” for micro-urban real-time resiliency monitoring and risk management
著者: Murakami D., Peters Gareth W., Yamagata Y., Matsui T.
掲載誌: Access, IEEE, PP(99), DOI 10.1109/ACCESS.2016.2516918.

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