2016年4月号 [Vol.27 No.1] 通巻第304号 201604_304003

インタビュー「地球温暖化の事典」に書けなかったこと 11 異なる問題のつながりを捉える—幅広い視野からのバランスの取れた影響研究を—

  • 高橋潔さん
    社会環境システム研究センター 統合評価モデリング研究室 主任研究員
  • インタビュア:横畠徳太さん(地球環境研究センター 気候変動リスク評価研究室 主任研究員)
  • 地球環境研究センターニュース編集局

【連載】インタビュー「地球温暖化の事典」に書けなかったこと 一覧ページへ

国立環境研究所地球環境研究センター編著の「地球温暖化の事典」が平成26年3月に丸善出版から発行されました。その執筆者に、発行後新たに加わった知見や今後の展望について、さらに、自らの取り組んでいる、あるいは取り組もうとしている研究が今後どう活かされるのかなどを、地球環境研究センターニュース編集局または地球温暖化研究プログラム・地球環境研究センターの研究者がインタビューします。

第11回は、高橋潔さんに、地球温暖化の影響研究、また温暖化対策としての「緩和策」と「適応策」についてお聞きしました。

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「地球温暖化の事典」担当した章
1.8 気候変動の影響・脆弱性 / 1.9 緩和策と適応策 / 7.2 農業
次回「地球温暖化の事典」に書きたいこと
適応策の具体的な解説と社会経済の将来変化を考慮した影響予測

IPCC第5次評価報告書の新視点

横畠

高橋さんは2007年に公表されたIPCC第4次評価報告書(AR4)に基づいて『地球温暖化の事典』を執筆されていましたが、2013〜2014年に第5次評価報告書(AR5)が発行されました。高橋さんはAR5第2作業部会(WG2)で代表執筆者としてかかわられましたが、地球温暖化の影響と適応について、最新のAR5では、新たにどんなことがわかったのでしょうか。

高橋

『地球温暖化の事典』では、AR4だけでなく、それ以前の評価報告書も参考にしながら記事の執筆を行いました。IPCCが設立されたのが1988年ですから、既にAR4公表の時点で、20年以上の研究の蓄積があり、温暖化影響に関する科学的理解もかなり包括的なものになっていたといえます。AR4公表の頃は、21世紀末に向けて、産業革命前と比べた全球の年平均気温の上昇を何°Cに抑えるかという、長期の安定化目標を世界的に共有するための議論が盛んに行われていました。既にAR4よりも以前から、特にEU諸国を中心に、2°C未満安定化の必要性を訴える強い動きがあり、2°Cを超えてしまったら何が起きるのか、2°C未満安定化を達成するにはどのような排出削減経路が必要なのか、という問いに取り組む研究が、AR4の前後に多くの研究機関で行われました。AR4についても、各時点で利用可能な科学的知見を基に国際交渉・対策検討を科学的側面から支援するのがIPCCの役割なので、当時の重要論点であった長期安定化目標の検討への寄与を多分に意識したまとめ方がなされたといえます。AR5では問いの幅をさらに広げて、より具体的かつ頑健な意思決定を支えるべく、2°C目標を達成しても起きてしまう影響、その影響に備えるための適応策、あるいは、排出削減の取り組みが失敗して全球平均気温が4°Cまで上昇してしまった状況下で懸念される影響、といった視点からも知見がまとめられています。また、現在までの観測に基づく評価に関しては、AR4からAR5まで7年の観測期間の継続・追加があり、研究論文も増えたことから、広い分野、広い地域にわたりより高い確信度で温暖化の影響がすでに顕在化しつつあることをキーメッセージとして示しています。

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横畠

2°C安定化を目指すというのは、AR4の後くらいから具体的になっていったのですね。

高橋

長期の安定化目標の検討を支えるべくAR4は整理されていますし、それが国際交渉のなかで判断の共通の前提となり、2009年のコペンハーゲンでのCOP15以後、いわゆる2°C目標への合意につながっていったわけです。さらに2015年12月にCOP21で合意されたパリ協定では、世界共通の長期目標としての2°C目標の設定に加え、1.5°Cに抑える努力を追及することへの言及もありました。

横畠

2°Cの目標が、どのような経緯で、世界で共有されていったかというのは、あまり知られていないことかもしれませんね。

研究の進展と確信度の関係

横畠

最新のIPCC報告書では、いろいろな分野での将来の温暖化影響についての知見が、より確かなものになった、確信度が高まった、といえるんでしょうか。

高橋

研究の進展に伴って、メッセージの確信度が高まるものもあれば、必ずしもそうではないものもあります。温暖化の影響の顕在化については、現実に温暖化が進行している状況なので、時間が進めば進むほど影響の観測事例が増え、確信度の高いメッセージが出せます。一方、50年後、100年後の影響予測については、表現が難しいです。というのは、研究が進むと、同じ分野の影響を調べるにもさまざまな方法が開発・提案されます。通常、影響予測のためには、影響発生のメカニズムを表現するモデルを開発し、将来の気候条件等の変化を想定したうえで、影響予測のコンピュータシミュレーションを行います。モデルの種類が増えても、どれも類似した結果を示すのであれば、将来の予測として確信度が高くなります。しかし、従来は研究コミュニティの規模が小さく、取り組んでいる人や手法が限られていたために、意見の一致が得られているように見えたけれども、より多くの人がさまざまな手法で予測研究に取り組むようになった結果、不確実性の大きさが初めて認識され、結果的に確信度が下方修正される場合もあるでしょう。

横畠

どんな影響に関しても、確信度が高まった、というわけではないのですね。研究が進むにつれて、逆に予測の幅が広がってしまった、ということもあるわけですね。

高橋

全般的な結論としては、AR5でも気候変化が大きくなればなるほど、どの分野においても悪影響が顕著になるという評価は変わりません。しかし、その影響の大きさの見積もりについては複数の評価方法を用いると幅が大きくなることがあります。断定的に予測結果が出せなくなることで、意思決定や協議する際の材料として使いづらいものになっているように見えますが、間違いの少ない有用な意思決定をしていくためには、こうした幅も含めて正しい情報を伝えるのは大事なことです。

横畠

研究の進展と蓄積によって、不確実性も含めて、いろいろなことが幅広く明らかになっていったわけですね。「政策決定者向け要約(Summary for Policy Makers)」の表が、広く人々に伝えたいことの、まとめになると思うのですが、これは、特に確信度の高い影響が選ばれたのでしょうか。

高橋

この表の内容については複数の地域で知見が確認されたりしたことで確信度が高まったといえますが、研究の蓄積で逆に確信度が低くなることもあり得ます。先ほども説明したように、研究の数が増えてもその評価の結果、見解が一致しないということが明らかになった場合には、確信度を低く抑える要素になります。また、確信度の高さもメッセージの書きぶり、命題の置き方によって変わってきます。たとえば「地球の平均気温は今後100年間上昇の傾向を示すだろう」ということでしたら確信度を高く言えるわけですが、「2100年の気温上昇は3〜3.5°Cの間だろう」というメッセージだと、確信度という観点では、そんなに高くありません。この表は、世界中の脆弱な地域において深刻になる影響リスクを示しています。その点では確信度が高いメッセージです。確信度が高く、かつそのリスクに関して政策決定者、国際交渉に携わる人たちに見落としてほしくないので、取り上げてまとめられました。

確信度の高い複数の分野や地域に及ぶ主要なリスク [クリックで拡大]

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出典:IPCC第5次評価報告書第2作業部会政策決定者向け要約に基づき作成

横畠

政策決定者向けの表は、確信度が高いだけでなく、影響が大きく、いろいろな人に見落としてほしくないという要素もあるのですね。

高橋

空間的な広がりが大きな影響は確かに重要性が大きいです。一方で、一部の地域・人々にのみ深刻な影響が集中する、というものも、公平性の観点からは、見落としてほしくないです。また、確信度は低いが起きるかもしれないというリスクをどう扱うか、という問題もあります。そういったリスクは、きちんと整理されないと、確信度は低いかもしれないが起きたら深刻な影響だから、注目を引くからと、メディア等に過度に強調されてしまうことがあり得ます。それに引きずられて行われる意思決定はアンバランスなものになる可能性があります。だからといってそれを完全に人目につかないところにしまっておき、良くわかるようになるまで待ちましょうというのもアンバランスな考え方です。IPCCの評価報告書は、以前から確信度をつけることで、確信度が低くても専門家が心配している要素があるということを伝えています。

気候変動による影響が連鎖して紛争につながる可能性

横畠

確信度が低くても、専門家が心配している要素、というのは、たとえばどのような影響でしょうか。

高橋

AR5で新たに評価されたリスクの一つは、気候変化の影響として食料や水の競合が起きると資源が不足し、それが原因で紛争につながるのではないかというものです。過去の紛争と気候・気象との関連について統計分析し、研究の結果として示されています。ただし、研究の数がまだ限定的なので、確信度が高いとは現時点ではいえません。

横畠

気候変動の影響の結果として紛争が発生した、というのは、どうやって示されたのでしょうか。

高橋

AR5で評価対象となった研究は、最近の気候変動の結果として紛争が実際に増えつつあるかを調べたものではなく、かなり昔まで遡って、極端な気象現象と社会的な混乱との関連について分析したものでした。さまざまな社会的条件が違うので、過去の異常気象の際に発生したことがそのまま現在や将来にも起きるというメカニズムについて強い裏付けをもった主張はできませんが、今後、研究が増えていくことが期待されています。

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横畠

確信度が低い、ということに関連して、最新のIPCC報告書でも扱いきれなかった問題もあるのでしょうか。

高橋

最新の報告書でも、不確実性を明示的に示すようになってきていますが、依然として評価の中で扱いきれていないのが将来の社会経済の想定です。かつては社会経済が変化しないという前提で影響予測を行うケースが多かったのです。AR5で調査された研究では、社会経済変化も考慮した影響予測が増えましたが、将来の社会経済発展の多様性についてはまだ考慮が不十分です。次のAR6に向けた今後の研究課題として残っています。

「確信度」の決め方は?

横畠

前から気になっていたのですが、IPCC報告書では、確信度が高いとか低いといった言葉が出てきます。そもそも報告書を書いている人は、影響の「確信度」をどうやって決めているのでしょうか。

高橋

エビデンス(証拠・根拠)の数とエビデンス間の見解の一致度、その2軸で評価して、両方が高ければもちろん確信度が高いという評価になります。中間のところについては執筆にかかわった専門家の判断で決めていきます。

横畠

エビデンスの数など、基準はあるのでしょうか。

高橋

はっきりとしたものはないですね。研究の対象地域のスケールや、どういう雑誌に掲載された論文かなども関係します。また、研究者が長く研究して、それに対する反論も跳ね返してきた、かなり洗練された研究知見もあれば、新しいアイデアで現時点では評価の定まらないものもあるので、数だけで評価を付けるのは難しいです。一方、温暖化影響の観測の見解については、観測点の数や観測期間をもとにして、より定量的な確信度の評価が可能です。

温暖化の日本への影響についての最新知見

横畠

日本への影響についても研究されていますね。

高橋

環境省環境研究総合推進費S-4「温暖化の危険な水準及び温室効果ガス安定化レベル検討のための温暖化影響の総合的評価に関する研究」が5年間(2005〜2009年)行われ、『地球温暖化の事典』にはS-4プロジェクトの成果やそのころ考えられていたことはある程度含めています。その後継として2010〜2014年まで5年間行われたS-8「温暖化影響評価・適応政策に関する総合的研究」の成果は、『地球温暖化の事典』の執筆時には利用可能ではなかったので、もし次の機会があれば参考にできる材料です。われわれのもっている日本の温暖化影響に関する、あるいは日本の適応に関する研究は、まとまった科学的知見としては非常に重要な情報源かなと思います。

横畠

このような研究成果は書籍などになっているのでしょうか。

高橋

S-8では、その成果報告書(地球温暖化「日本への影響」—新たなシナリオに基づく総合的影響予測と適応策—)を2014年3月に発行しました(http://www.nies.go.jp/whatsnew/2014/20140317/20140317-3.pdf)。報告書には、以前は取り組めなかった金銭換算への評価にも踏み込んだ研究結果も示されています。

卒論からスタートした温暖化影響評価研究

横畠

高橋さんは、今のように地球温暖化研究が盛んになる前から、この問題に取り組まれていましたよね。いつごろ、どのようなモチベーションで取り組み始めたのでしょうか。また、農業、水資源といった自然環境の問題から、健康、社会へ影響まで、非常に幅広く温暖化影響評価の研究をされています。幅広いテーマにバランスよく取り組み、いい成果を出すために、研究の哲学というか、何か心がけていることなどありますか。

高橋

温暖化研究に取り組むようになったきっかけは、極めて素直なもので、大学の卒論のときに指導教官から提示されたテーマの一つだったからです。気候変化が起きたときに農業(作物の収量)にどんな影響が生じるのかを調べてみないかという提案をいただき、面白そうだなと思いました。大学の専攻は衛生工学で、水質、廃棄物、大気汚染といった環境問題全般を扱っていました。1990年代半ばのことなので、地球環境問題はすでに社会的に認められていましたが、研究の規模は小さく、マイナーであったというのが私の認識です。私自身も温暖化に興味がありよく知っていたというわけではありません。ほとんど知らないに近かったのですが、だからこそ勉強してみたいと思いました。そのときに現在もかかわっている国立環境研究所(以下、国環研)のアジア太平洋統合評価モデル(Asia-Pacific Integrated Model: AIM)の研究チームに加わり、モデル開発の一環として、温暖化の影響研究をすることになりました。日本で温暖化影響研究の専門家というと、もともとは農業や水資源など個別の研究分野が専門で、温暖化問題の深刻さが次第に認識される中で、自身の専門性を活かして影響評価に取り組むようになった人が多いと思います。私の場合は、AIMという複数分野の影響研究と対策評価を同時に行う枠組みの下、方向性を一にするに方々と共に研究に取り組むこととなりました。その環境の中で、複数の影響分野について広く理解したいという欲求が内側からも高まりましたし、あるいは、複数分野の影響を見てほしいという周囲からの期待も感じたという背景があります。それが分野としてあまり偏らず広く研究する結果に至った一番大きな理由です。

別の説明の仕方をすると、農業、水資源、土地利用の問題は、それぞれ分かれた問題のように見えて、実は相互に関連しています。たとえば農業に深刻な影響が出て対策を考える場合、灌漑をどうするかがとても大事になるので、水資源のことも把握しなければいけなくなります。あるいは農地を増やすことが求められるかもしれません。専門分野としては分かれていても、互いにつなげて考えていく必要があります。その点からも、複数分野の影響をみなければというモチベーションはあったのかなと思います。

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横畠

大学院の修士課程で温暖化の農業への影響を研究して、国環研にきて、AIMを使った研究に取り組んだことで、幅が広がったのですね。

高橋

初めの頃は、複数分野の影響について広く研究したいとか、それを周囲から期待されているという意識はありませんでした。とにかく農業・作物収量モデルに没頭していて、全く現実の収量データに合わないモデルを少しでも合うようにしなければと思い、データを集めて取り組んでいました。大学院修士2年の時に国境研で研究員として職を得て、それ以降さまざまな研究プロジェクトに参加させて頂くなかで、広い範囲のことをおさえていくニーズを理解しました。もともとAIMは社会・経済系の研究者が中心になって開発を進めていましたが、温暖化の影響研究は、気候予測との関係が大事だと途中で考えるようになり、当時の大気環境研究部の人たちとも連携するようになりました。

温暖化と社会問題を同時に解決する研究成果を

横畠

これから、どのような研究をしたいですか。

高橋

温暖化以外の世の中の諸問題の解決も同時に考慮した対策や、温暖化以外の問題に波及的に及ぼす悪影響についてモデルを使って定量的に評価できるような取り組みを、4月からの新しい中長期計画の研究課題として推進しようという動きが国環研のなかに出てきています。温暖化でのこれまでの蓄積を活かしつつ、その課題にうまく貢献できるよう自分の研究の照準を合わせていきたいと思っています。社会経済発展の将来想定については、温暖化以外の問題に関しても整合性をもって扱っていくことが求められます。その点からも、多様な社会経済想定をきちんと考慮した影響研究ができると、温暖化問題とほかの社会問題との同時解決につながる、比較的間違いのない主張、研究成果を出すことができるのではないかと考えています。

横畠

温暖化以外の問題というのは、たとえばどういうものですか。

高橋

国環研のなかで協力を得て取り組めたら良いと特に考えているのは、生態系・生物多様性への影響です。温暖化対策を大規模にとることによる生態系・生物多様性への影響については、研究がまだ不足していると思います。

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適応策の具体的な解説と社会経済的な将来変化を考慮した影響予測

横畠

次回、『地球温暖化の事典』を書くとしたらどんな内容を書きたいですか。

高橋

今回は、温暖化影響の評価については、評価手法や入力条件などの説明を含めることができましたが、適応策については、具体例をあげた説明を十分に書けませんでした。適応策は緩和策との対比でその性質などを記述しているだけで、適応策を実際にとろうとしたときに阻害する因子があるのか、どういった条件が整わないと実際に対策をうつことができないのか、対策をうつとどんな波及効果があり得るのか、そういった点について具体的に解説することができませんでした。実は対策をうつかうたないかというのを現場で判断するときには、こういうことが大きく作用する可能性があるので、充実させたいと思います。さらに、社会経済的な将来変化を考慮した研究をきちんと位置づけて新しい『地球温暖化の事典』のなかでも伝えることができたらいいと思います。

横畠

将来、社会がどう変わるかといった問題までを幅広く考えて、地球温暖化の影響を評価するということですね。

高橋

温暖化問題をより幅広い文脈に位置づけて捉える視点と、その視点における影響予測のあり方について、まとめたいです。

Fig.曝露と脆弱性の大小を考慮した「懸念の理由」の拡張

高橋潔

全球気温変化の目標検討に関する議論を科学的側面から支援する目的で、IPCCは「懸念の理由」と呼ばれる図を用いて、研究知見の総合化を行ってきた(図1)。「懸念の理由」は全球平均気温に応じて、5つの観点についてリスク水準がどのように高まるかについて、(多数の定量的な研究知見をふまえた)専門家らの評価を表現したものである。

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図15つの懸念の理由 [クリックで拡大] 色合いは、気温上昇が当該水準に達し、それが継続した場合の、気候変化による追加的リスクを示している。白(非検出):影響が検出・原因特定されない。/黄(中程度のリスク):少なくとも中程度の確信度で、関連の影響が検出・原因特定される。/赤(高いリスク):影響が深刻かつ広範に広がる。/紫(非常に高いリスク):主要リスク選定基準全てについて非常に高い。 出典:WG2-AR5-SPM(Assessment Box SPM.1 Fig.1)とWG2-AR5第19章の記述に基づき著者が作成

従来の「懸念の理由」については、その表現方法の限界として、人口や経済規模といった社会経済因子の将来変化の効果(曝露や脆弱性の大小)を明示的に表現出来ないことが挙げられてきた。この限界については、AR5作成作業の初期より課題として認識されており、評価対象の文献が多く利用可能な場合には、従来の「懸念の理由」を拡張し、図2の形式でリスク水準の評価がなされる可能性があった。しかし実際には、AR5の執筆期間までに公表された新規研究の不足から、その概念説明図を本文に収録するにとどめられている。今後、社会経済の多様な発展を考慮した影響予測研究の充実が求められている。

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図2曝露と脆弱性の大小を考慮した「懸念の理由」の拡張 [クリックで拡大] 出典:WG2-AR5第19章(Figure 19-5)に基づく; 図中のB1・A2は社会経済シナリオの違いを示す。あくまで概念を説明するための仮想的な図であり、文献に基づく評価結果ではない。

*このインタビューは2016年2月1日に行われました。

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