2016年2・3月号 [Vol.26 No.11] 通巻第303号 201602_303011

平成27年度スーパーコンピュータ利用研究報告会を開催しました

  • 地球環境研究センター 研究支援係

地球環境研究センター(以下、センター)は、2015年11月30日(月)に国立環境研究所(以下、研究所)交流会議室で平成27年度スーパーコンピュータ利用研究報告会(以下、報告会)を開催した。研究所は、将来の気候変動予測や炭素循環モデル等の研究開発や膨大なデータを扱う衛星データ解析、その他の基礎研究などを支援する目的で、スーパーコンピュータ(以下、スパコン)を所内に整備・運用し、所内外の環境研究者に計算資源を提供し、スパコンでしか実現できないような研究成果を生み出してきた。

研究所は、スパコンの利用・運用方針などを審議する「スーパーコンピュータ研究利用専門委員会」(以下、専門委員会)を設置し、所内外のスパコン利用希望ユーザーから申請された研究課題について、専門委員会の意見を踏まえて、スパコン研究利用の可否を判定している。利用が認められたユーザーには、年に一度の報告会(当報告会)で報告が求められる。

報告会は、毎年、所内及び所外利用の課題代表者(又はその代理)によって行われる。今回は、所内8、所外7課題(内1課題は平成26年度で終了)、合計15の研究課題について、平成26年度の研究成果および平成27年度の中間結果に関する報告が行われ、最新の研究成果および今後の展望と利用、さらに研究におけるスパコンの重要性が述べられた。報告された内容としては、地球環境をコンピュータ内で仮想的にモデル化し(コンピュータモデルについては地球環境豆知識 [33] 地球環境研究センターニュース2015年2月号参照)、気候変動メカニズムの理解を進め将来予測を行った研究成果、オゾン層や広域的な大気汚染のメカニズム理解、雲降水システムの研究、海洋混合スキームの高度化、人工衛星データを解析して地上からの温室効果ガス排出を推定する試み等々多岐にわたる。昨年度で終了した京都大学・小森悟教授の風波気液海面における熱輸送機構の解明とモデリングの研究は、過去約20年間にわたって室内実験と数値計算を組み合わせて行われた基礎研究であり、温暖化研究にも応用可能であることが示された。

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写真研究成果発表を聞く参加者。60名以上が参加し、活発な質疑応答が行われた

今年度から当研究所のスパコンがスペックアップされたのを機に、結果の統計的な意味や有意性を明らかにするため、初期値以外は同条件で多数回計算を繰り返すといったアンサンブル数を増やした計算結果を発表した研究課題もあった。これら各研究成果報告後の討論では、専門委員会委員および研究者からも活発に質問があり、さまざまな立場からの多くの貴重な意見により、スパコン利用をさらに発展させ、環境研究を進める機会とすることができた。

当日報告された内容の詳細については、センターのウェブサイト(http://www.cger.nies.go.jp/ja/activities/supporting/supercomputer/index.html)を参照されたい。上記サイトには、過去の報告会における発表内容に関する情報が掲載されている(ただしすべての情報ではない)。

前述のとおり研究所のスパコンシステムは今年度に更新され、新しいベクトルマシンが導入された。計算速度等のスペックは世界トップレベルのシステムではないが、限られた性能の下でさらなる研究成果の充実が期待される。今後も、手厚いサポートと安心して利用できる研究用スパコンシステムをめざし、ノウハウのさらなる蓄積を進めている。

目次:2016年2・3月号 [Vol.26 No.11] 通巻第303号

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