2016年2・3月号 [Vol.26 No.11] 通巻第303号 201602_303010

西表島の児童・生徒の皆さんと一緒に気候変動を考える

  • 地球環境研究センター 炭素循環研究室 特別研究員 野村渉平

ある一定範囲(100km2〜300km2程度)における森林の二酸化炭素(CO2)吸収量を推計する手法を開発するために、私たちは西表島中央に分布する天然林を調査対象とし、島の東部・西部・南部・北部の海岸近くの計4地点に2013年7月からCO2計を設置しました。それから約2年半、4地点の大気中CO2濃度を観測した結果、年間を通して日中において風下地点のCO2濃度は風上地点のCO2濃度より低く推移しました。これは、各地点の風向風速に大きな差がないこと、各地点とも人為的な影響がほとんどない場所であることから、空気塊が島に分布する森林上空を通過する際に、それに含まれるCO2が森林の光合成の働きにより吸収されたためだと推察されます。

観測が行われた4地点の内、3地点は小学校ならびに中学校(古見小学校、白浜小学校、船浦中学校)でした。調査開始時、西表島の中央に位置する森林のCO2吸収量を大気中CO2濃度の観測値から推計するためには、島の東部・西部・南部・北部の海岸近くでかつ生活道路から離れた地点での観測が必要と考えたのですが、その条件に合致する3地点に学校がありました。そこで竹富町の教育委員会から各学校に観測機器の設置許可を問い合わせたところ、快諾していただき上記学校に機器を設置し本調査がスタートしました。

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約2年半の観測を経て、2015年12月に設置したCO2計の撤去を行うことになり、これまでCO2濃度観測にご協力いただいた感謝として、各学校の児童・生徒の皆さんと炭素循環と気候変動に関して話す機会をいただけないかとそれぞれの校長先生にお願いしてみたところ、快く受けていただきました。朝、授業が始まる前、あるいは放課後に時間を確保していただき、児童・生徒の皆さんと50分ほど、簡単な実験(BTB指示薬により染色された海水に自身の呼気を吹きかけ、海水のpHが変わることによりその海水の色が変わる実験)を交えながら話をしました。3つの学校の児童・生徒の皆さんからすれば突然やって来た見知らぬ大人に警戒心を持っても不思議ではありませんが、最初から最後まで真剣に話を聞いてくれました。また、実験で見られた海水の色の変化に素直に驚き、その驚きを友人たちと共有していました。私自身は中学2年生の夏休みにきれいな海を見て、かつその海の変化を観察している研究者の話を聞いたことがきっかけで、環境に強い関心を持ちました。今回の機会により、一人でも環境に興味を持ってくれる児童・生徒がいればと思いながら、各学校をあとにしました。

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写真1実験で自身の呼気により変化した海水の色を見せ合う児童たち

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写真2気候変動の話を真剣に聞く生徒の皆さん

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写真3話のあと生徒同士で自身の感想や意見交換をする

目次:2016年2・3月号 [Vol.26 No.11] 通巻第303号

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