2015年6月号 [Vol.26 No.3] 通巻第295号 201506_295005

国立環境研究所一般公開「春の環境講座」を開催しました 2 エネルギーと地球温暖化編

  • 地球環境研究センター 主幹(国立環境研究所 一般公開実行委員) 広兼克憲

2015年4月18日(土)の国立環境研究所一般公開「春の環境講座」開催報告(第2報)として、エネルギーと地球温暖化についての内容をご報告します。

1. 自転車発電

国立環境研究所の一般公開での連続展示記録を続けている自転車発電、この春は「自転車de発電スペシャル(家電を自力でつけてみる!)」と題して行いました。自転車は子ども用の1台を含めて合計3台用意し、そのうち1台では、10秒間自転車をこいだときの最大瞬間発電量と平均発電量をW(ワット)の単位で測定・表示できます(写真1)。今回の公開では100名を優に越える方が家電を自力でつけるチャレンジをされ、電力のありがたさを身をもって体験いただきました。そのほか、テレビや扇風機などをつける自転車発電体験者もかなりいらっしゃいました。小さな子どもたちも、子ども用の自転車発電に挑戦してくれました。一般公開来場者が595名ですから、約2割の方がこのパワー測定に挑戦されたことになります。

パワー測定の参加者数を昨年の「夏の大公開」と比較すると以下のとおりです(表)。今回は一般男性の参加者が多かったようです。夏の公開時は小学生が多いですが、自転車で通学することも多い高校生(特に女子)の挑戦者は少なく、次回は高校生にもっと参加してもらう工夫が必要と考えています。

自転車発電参加者(男女・年代別)

参加人数 2014夏 2015春
小学生男子 68 13
中学生男子 29 3
高校生男子 2 9
一般男性 23 55
小学生女子 37 10
中学生女子 6 3
高校生女子 0 0
一般女性 4 18
合計 169 111

この「自転車de発電スペシャル(家電を自力でつけてみる!)」では、図1のようなパネルを用意し、家庭の消費電力と自転車発電の大変さをデータで比較できるようにしています。一般に、エアコンや調理機器など電気を使って熱を生み出す家電製品は消費電力が大きく、自転車発電で起動させることは困難です。一方、省エネ型の明かりや液晶テレビであれば自転車発電の電力でも十分起動できます。

家庭ではスイッチ一つ押すだけで電気製品が動きますが、それを自転車発電で賄おうと思ったら「とてもタイヘン」と知ることだけでもエコな生活につながると思います。

さあ、次回の自転車発電は、7月18日(土)の夏の大公開です。まだの方は、是非ご体験ください。

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このパネルにより自転車発電の発電力と家電製品の消費電力を比較できます [クリックで拡大]

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写真110秒間自転車をこいだときの最大瞬間発電量と平均発電量をW(ワット)として測定・表示(404Wは相当なパワーです。瞬間的に縦型洗濯機を動かせるぐらいの電力ですが、おそらくこれを30秒続けることは難しいでしょう)

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写真2「自転車de発電スペシャル(家電を自力でつけてみる!)」に挑戦する来場者

2. あなたのくらし、カーボンメタボになっていませんか?

「メタボ」という言葉に敏感なお父さん・お母さん・お兄さん・お姉さん、人間だけではなく地球のカーボンメタボについても学習する必要がありますよー。ということで、今回展示したのは、「さすてなスイッチビール版」と「省エネ貝合わせ」です。私たちのくらしを支える食べもの、飲みもの、便利な機器の数々…。選び方、買い方、使い方であなたのくらしのカーボンメタボ度は大きく変わります。

「さすてなスイッチビール版」では、お父さんの好きなビールの一生について、カーボンフットプリント(炭素の足跡:二酸化炭素の見える化)という観点から、どのような選択(ビールの容器、購入方法、空きビン・空き缶の取り扱いなど)をすればがいちばん二酸化炭素排出を少なくできるかを、ゲーム感覚(スマホのゲームではありません)で勉強します。写真3では、異なる方法でビールをお店に買いに行ったときに排出されるそれぞれの二酸化炭素排出量を風船の大きさと重さで比較し、示しています。ここではビールの容器(ビン・アルミ缶)の選び方、流通の仕方(ショッピングセンター、コンビニ、酒屋など)、店への行き方などが二酸化炭素排出量に大きく影響してくることを学べます。

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写真3「さすてなスイッチビール版」を使ったカーボンフットプリントの説明(風船の大きさで二酸化炭素の排出量が示されます)

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写真4「さすてなスイッチビール版)の全貌。一番上からビー玉を転がします。この台すべてが手作りです!

さらに、貝合わせでは、家電や車などの使い方や機器の選び方などによって二酸化炭素排出量が違うことを勉強できます(写真5, 6)

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写真5, 6省エネ行動を示したイラストとそれによって削減できる二酸化炭素排出量があっていると貝がぴったりはまります。貝合せとは、その組み合わせを見つけるゲームで、平安時代から伝わる由緒あるあそびです

3. あなたの “ミライ” は低炭素?〜2050低炭素ナビ体験〜

ここではパソコンを使って、「2050低炭素ナビの簡易版」を体験していただきました。皆さんそれぞれがこうなる・こうすると思い描いた未来がどの程度 ”低炭素” につながっていくのかがすぐに計算されて画面に表示されるようになっています。

たとえば将来の電力を再生可能エネルギーから多く得る場合とそうでない場合の比較なども可能です。

詳しくは、http://www.2050-low-carbon-navi.jp/web/jp/ をご覧ください。

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写真72050低炭素ナビの簡易版操作体験に真剣に取り組む来場者

4. 温度とくらしのふしぎな関係〜身近な熱の世界〜(一ノ瀬博士のサイエンスショー)

赤外線サーモカメラを使って身の回りの熱環境とくらしの関係を紹介しました。社会環境システム研究センターの一ノ瀬俊明主任研究員が、実際に赤外線サーモカメラで様々なものを撮影して、その画像を解説することにより、熱の世界について皆様にご説明をしました。1回20分のショーを3回開催しましたが、すべての回でほぼ満席になりました。写真はガラスが赤外線を通さないことをカメラで確認している様子です。サッシの空いた方(熱画像では真ん中から左側)からは会場の様子が直接カメラに写っているのが見えますが、ガラスのある方(熱画像では右側の青い部分)は鏡のように(サッシの前に座る被験者からの赤外線が)反射していることがわかります。また、温度が高いところほど赤く写っています(情報処理に時間がかかるため、熱画像の絵柄は実際より微妙に遅れています)。

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写真8赤外線カメラを使うと温度の高いものと低いものの区別が画像としてわかります。また(肉眼では)透明に見えるガラスが透明には写りません。鏡のように、ガラスの前の物体から出ている赤外線(その物体の表面温度を反映)がうつって見えてしまいます

2015年7月18日(土)には国立環境研究所「夏の大公開」が予定されています。子どもから大人まで楽しんでいただける企画を多数ご用意させていただき、また、来場者参加型パネルディスカッションも新たなテーマを設定して準備しています。多くの方々のご来所を職員一同お待ちしております。

*第3報:パネルディスカッション編は、後日、地球環境研究センターニュース増刊号でご紹介します。

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地球環境研究センター ニュース編集局
www-cger(at)nies(dot)go(dot)jp
FAX: 029-858-2645

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