2015年3月号 [Vol.25 No.12] 通巻第292号 201503_292005

2018年1月の打ち上げを目指すGOSAT-2

松永恒雄さん
環境計測研究センター 環境情報解析研究室長
地球環境研究センター GOSAT-2プロジェクトチームリーダー

  • 地球環境研究センターニュース編集局

温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(Greenhouse gases Observing SATellite: GOSAT)は、主要な温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)とメタン(CH4)の濃度を宇宙から観測することを目的とする世界初の専用衛星です。「いぶき」は2009年1月に打ち上げられた後、5年間の定常運用期間を無事終了し、後期運用期間に入った現在も観測を続けています。さらにGOSATの後継機であるGOSAT-2については、2018年1月の打ち上げを目指して現在準備が進められています。GOSAT-2はGOSAT同様、環境省、宇宙航空研究開発機構(Japan Aerospace Exploration Agency: JAXA)、国立環境研究所(以下、国環研)の三者の共同プロジェクトです。ここでは三者の役割分担とGOSAT-2の特徴についてご紹介します。

GOSAT-2では、GOSATにおける三者の役割を基本的にそのまま引き継ぎます。環境省はGOSAT-2データの環境行政への利用、JAXAは衛星とセンサの設計・開発・試験・打ち上げ・運用・データの校正とレベル1処理、国環研はレベル2〜4処理およびデータの検証と提供を担当します。具体的にご紹介しますと、国環研はフーリエ変換分光器(Fourier Transform Spectrometer 2: FTS-2)の短波長赤外放射計(Short Wavelength InfraRed: SWIR)のレベル2プロダクト(プロダクトについては科学の国の「はて、な」のコトバ参照)であるCO2、CH4、一酸化炭素(CO)のカラム濃度/カラム量および、レベル4プロダクトのCO2、CH4の吸収排出量を算出するアルゴリズムを開発します。また開発したアルゴリズムによるGOSAT-2プロダクトの定常処理のための地上データシステムを構築するとともに、作成されたプロダクトの検証を行います。さらにデータ利用として、GOSATでも実施してきた炭素循環に関する研究に加え、大気化学(大気汚染)研究、行政につながるような橋渡し研究も実施する予定です。

現時点でのGOSATとGOSAT-2の性能を比較したのが表です。GOSAT-2の本体はGOSATよりやや大きく、マイクロバスくらいの大きさです。また両側に太陽電池パネルが2枚つく構成は変わっていません。大きな違いは回帰日数が3日から6日に変わることです。これはエアロゾルの観測のためです。3日の場合はある場所はいつも同じ方向からしか観測されませんが、6日間の場合、同じ場所を違う方向から2回観測することができ、エアロゾル量等の算出精度が高まることが期待されます。また回帰日数の変更に伴い、衛星の高度も666kmから613kmに変わります。測定する気体はこれまでのCO2、CH4、水蒸気(H2O)、酸素(O2)、オゾン(O3)に加えてCOも対象となります。CO観測のためにFTS-2の観測波長範囲を一部変更しています。また雲・エアロゾルイメージャ(Cloud and Aerosol Imager 2: CAI-2)は、これまで4バンドでしたが、全部で10バンドとし、さらにそのうち5バンドを前方視、5バンドを後方視とすることにより、海面における太陽光の鏡面反射を避けたより広範囲のエアロゾルや雲の観測が可能になります。また、FTS-2の観測予定方向をカメラで直前に撮影し、雲がある場合にはポインティング鏡を微調整して雲を避ける新機能(インテリジェントポインティング)も搭載される予定です。

GOSATとGOSAT-2の性能比較 [クリックで拡大]

table

プロダクトの検証についてもGOSATと同様に実施する予定です。全量炭素カラム観測ネットワーク(TCCON)による地上観測データを基本に、地球環境研究センターを中心とする研究チームが実施している航空機による大気観測プロジェクト(Comprehensive Observation Network for TRace gases by AIrLiner: CONTRAIL)などのデータも利用していきます。CONTRAILデータはさらにレベル4プロダクト作成にも使用する予定です。

GOSATでは、CO2濃度推定値のバイアス誤差が空間的に変わるのではないかということが問題になりました。その確認のため、現在地上の検証サイトがない南アメリカ、アフリカ、南アジア、東南アジアに、GOSAT-2プロジェクトの一環としてサイトを一つ立ち上げることを考えています。すでに候補地のリストアップが行われ、フィリピンの候補地については昨年調査団が訪問しました。具体的なサイトは来年度、諸条件を考慮して決定する予定です。再来年度には、つくばで調整した観測装置を現地に運んで観測を開始したいと思っています。

2014年11月に国環研GOSAT-2プロジェクトのウェブサイト(英語)を公開しました。プロジェクトに関する詳細は http://www.gosat-2.nies.go.jp/ を参照してください。

figure

GOSAT-2のロゴマーク(“O” はGOSAT-2が大気中のCO2濃度を推定するために太陽光を観測することを表している。太陽またはひまわりを形取ったイラストは太陽と自然の恵みを表現している。細長く伸びた “S” は、衛星の軌道と衛星による温室効果ガス観測がさらに発展される期待を示し、文字の色(若草色)は緑に満ちた明るい環境をイメージする。全体として、GOSAT-2のロゴは明るく独創的、親しみやすく希望のもてる素晴らしい未来を象徴している)

*本稿は2015年1月15日の地球温暖化研究プログラム・地球環境研究センター合同セミナーの発表をもとに編集局で作成しました。

ご意見、ご感想をお待ちしています。メール、またはFAXでお送りください。

地球環境研究センター ニュース編集局
www-cger(at)nies(dot)go(dot)jp
FAX: 029-858-2645

個人情報の取り扱いについては 国立環境研究所のプライバシーポリシー に従います。

TOP