2015年1月号 [Vol.25 No.10] 通巻第290号 201501_290007

観測現場発季節のたより 5 ひと味違う富士北麓の黄葉

  • 地球環境研究センター 陸域モニタリング推進室 高度技能専門員 山尾幸夫

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2014年11月28日、気象庁から東京のいろはかえでの紅葉が発表され、皇居ではこの時期に合わせ紅葉の名所として知られている乾通りの一般公開があり、12月3日から7日までの5日間で約35万人が訪れました。いろはかえでの紅葉の美しさは誰もが認めるところですが、私達が森林生態系の総合観測をしている富士北麓フラックス観測サイト(以下、富士北麓サイト)の広大なカラマツ林の黄葉はひと味違う美しさがあります。この秋の黄葉シーズン中、富士北麓サイトがある山梨県富士吉田市では、富士山をバックにした美しい黄葉狩りを楽しむ人々で大にぎわいとなりました。

ところで黄葉と呼ばれながらカラマツの色は橙色をしています。もともと葉内には主にクロロフィルとカロチノイドが存在しており、秋になると夏まで光合成の主役だった緑色のクロロフィルが次第に消えていき、残ったカロチノイドの色素が目立つようになるのが黄葉です。カロチノイドには橙色のβカロチンと黄色のキサントフィルが主成分として含まれており、カラマツの場合βカロチンが目立つようになるため橙色に見えます。また、キサントフィルが目立つイチョウの場合、黄色く見えます。一方、紅葉の場合も秋になるとクロロフィルが消えていくのは黄葉と同じですが、その過程で赤色のアントシアニンが作られるため赤色になります。

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写真1黄葉最盛期を迎えた富士北麓サイトの様子(フラックスタワー32mに設置されている11月7日のライブカメラ画像/インターネット自然研究所から)

さて、当サイトでは高さ約32mの観測タワーに設置している定点カメラによるカラマツを対象とした森林フェノロジー(生物季節)観測を行っております。カラマツの黄葉は早い木では9月下旬から始まり、11月上旬に最盛期となり、同月下旬に落葉を迎えます。この過程は概ね夏から秋の気温により変動し、気温が低いと早まり、高いと遅くなる傾向が観られます。今のところ8月の日最低気温が一番高い日の気温と、その日から起算した各日との気温差の積算値と関係が深そうだということがわかってきました。気温以外の関連要素の解明は今後の課題ですが、これからも観測を重ね、将来的には黄葉予測まで実現したいと考えております。

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写真2右上に写っているのが観測タワー。赤い四角で囲まれた部分がカラマツの色を解析したエリア。黄葉最盛期ですが、早い木では既に落葉しています。(左から2つ目の赤い四角が表示されている木)

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