2015年1月号 [Vol.25 No.10] 通巻第290号 201501_290006

北海道の陸別小学校と陸別中学校で出前授業を行いました

  • 地球環境研究センター 大気・海洋モニタリング推進室長 町田敏暢

2014年11月14日に北海道陸別町にある陸別小学校と陸別中学校で出前授業を行いました。このイベントは、陸別町において観測研究などを実施している国立環境研究所(以下、国環研)、名古屋大学、北海道大学、北見工業大学、国立極地研究所と陸別町が、情報交換や地域振興などを目的として設立した陸別町社会連携協議会の活動の一環として毎年開催しているものです。地球環境研究センターでは1997年より国立環境研究所陸別成層圏総合観測室において、成層圏オゾンや地上到達有害紫外線のモニタリング、さらにはフーリエ変換分光計を使った二酸化炭素およびメタン濃度の観測を実施していることから、陸別町への恩返しとして参加しています。

今年度の出前授業には国環研の他に、名古屋大学と北海道大学からも講師が参加し、小学校の3〜6年生および中学校の1〜3年生をそれぞれ分担して受け持ちました。陸別町教育委員会からは「実験を中心とした授業」をリクエストされていましたので、今年度も昨年度と同様に大気中の二酸化炭素の講義の後に二酸化炭素が海水に溶解する実験を実施しました(田上厚子「日本一寒い町の陸別小学校・陸別中学校の出前授業に参加して」地球環境研究センターニュース2014年1月号参照)。ちなみに、名古屋大学は「波」の講義を行い、音を発する物体の相対速度によってドップラー効果が生じる実験をしました。北海道大学はプリズムと同じ働きをする回折格子を使って可視光線を七色の光に「分光」する実験を行いました。いずれの授業も生徒たちばかりでなく、教室の後方で傍聴している大人たちも目を輝かせて聞くほど興味深いものばかりでした。

国環研の授業は、大気中の二酸化炭素濃度が実際に増えているという事実を、地球環境モニタリングステーション波照間や落石岬での観測結果を示しながら理解してもらい、その濃度増加は化石燃料の燃焼による大気への二酸化炭素の放出から、陸上生態系と海洋による二酸化炭素の吸収を差し引いた分によって起こっていることを最初に説明します。次に海洋が二酸化炭素を吸収することを確かめる実験を行います。生徒に小瓶を配り、小瓶に海水とBTB溶液を入れます。ここに呼気を吹き込むと、弱アルカリ性の海水が酸性に近づくため、青色だった水の色が緑色から黄色に変化することを目で見て確認します。さらに、小瓶に入っている高濃度の二酸化炭素を含んだ空気をきれいな空気に入れ換えると、こんどは海水から二酸化炭素が放出されるので海水はもとの青色に戻ります。この実験によって地球上の海洋は場所によっては二酸化炭素を吸収し、別な場所では放出もしていると説明します。授業後には小瓶を各自持ち帰ってもらい、家族に同じ実験を見せることを宿題としました。生徒が自分の口から説明することで、今回の授業での理解をさらに深めることが狙いです。

photo

写真1陸別中学校にて海水実験の説明

photo

写真2海水を小瓶に取り分ける中学生

photo

写真3「海水は入れすぎないように」と説明しているところ

photo

写真4息を吹き込んで小瓶を振ると、色が変わった!

海水の酸性化実験は比較的簡易な用具で行うことができ、視覚に訴えながら地球上の出来事を身近に感じることができる都合のよい教材です。2014年7月に行われた夏の大公開で、地球環境研究センターの企画の1つになり、大変好評でした(白井知子「夏の大公開『さあ漕ぎ出そう、エコ世界への大冒険!』を開催しました」地球環境研究センターニュース2014年9月号参照)。来年度も出前授業を担当できれば、陸別町の小学5年生から中学3年生までの皆さんに海水実験を経験してもらえます。将来を担う子供たちに地球上の環境変化を少しでも理解してもらえればと思います。

ご意見、ご感想をお待ちしています。メール、またはFAXでお送りください。

地球環境研究センター ニュース編集局
www-cger(at)nies(dot)go(dot)jp
FAX: 029-858-2645

個人情報の取り扱いについては 国立環境研究所のプライバシーポリシー に従います。

TOP