2014年10月号 [Vol.25 No.7] 通巻第287号 201410_287003

夏季現場実習でわかったCGERのこと

  • 早稲田大学創造理工学部 環境資源工学科 本多涼香

1. はじめに

8月25日から9月3日までの間、私はインターンシップ生として国立環境研究所の地球環境研究センター(以下、CGER)で実習を行いました。内容は、CGERの活動の中心である地球環境モニタリングの概要と、アウトリーチ活動を含む社会還元に向けての実習でした。今回、実習報告とアウトリーチ活動を兼ね、CGERニュースの記事を書く機会をいただきました。これより、担当指導員であった広兼克憲さん(交流推進係)のもとで、私が実習期間に体験したこと、学んだことを述べていくこととします。すべてについてはスペースの関係上書けませんが、この記事から、CGERの活動についてより知っていただけたら幸いです。

2. 地球環境モニタリング・観測について

研修の前半では、CGERの行っている各種モニタリングの概要を知るため、担当の研究員の方々のお話を伺いました。

地上モニタリングの分野では、北海道の落石岬(写真1)・沖縄県の波照間の両ステーションからのデータ管理や、施設の点検等を行っている織田伸和さん((一財)地球・人間環境フォーラム)から説明を受けました。ステーションでは二酸化炭素をはじめ、温室効果ガスの観測が自動で行われているのですが、内部は無人です(写真2)。異常が起こると、自動で所内のパソコンに通知が来るそうです。このようなところからも機械技術の進歩を感じます。

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写真1落石岬ステーション空撮

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写真2モニタリングステーション内部の様子

航空機モニタリングの分野では、担当の町田敏暢さん(大気・海洋モニタリング推進室長)のお話をうかがいました。シベリアにおける観測は、温室効果ガスの分布を高さ別に見ることができ、季節ごとの濃度の移り変わり、大気の上部、下部での伝わり方の違いがわかります(図1)。地表付近ほど、二酸化炭素濃度の変動は大きいです。動植物、特に二酸化炭素量に大きく関わる植物の多くは地表付近に生息しており、光合成量や呼吸量の変化の影響が大きく出るためです。

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図1スルグート(シベリア)上空での各月の平均的な二酸化炭素濃度の鉛直分布

また、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(Greenhouse gases Observing SATellite: GOSAT)についても、様々なお話を聞くことができました。GOSATは、2009年1月に打ち上げられた衛星で、これまで二酸化炭素やメタンの濃度を、地球全体に渡って観測しています。これらのガスの持つ、特定の波長の光を吸収する性質を利用して、濃度を求めるのですが、遥か上空からそのようなことをできるとは驚きです。GOSATはさらに、煙と雲を見分けるセンサーを持っており、これは現在、世界で唯一の技術だそうで、こちらの機能でも注目を集めています。

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図2「いぶき」の観測による2013年8月の二酸化炭素濃度

3. 富士北麓フラックス観測サイトにある観測塔について

富士北麓にあるカラマツ林観測塔には、担当の三枝信子さん(副センター長)のご案内のもと、実際に訪れることができました(写真3)。このカラマツ林では塔、あるいはチャンバーボックスと呼ばれる観測装置の入った箱(地面に設置)を用いて、二酸化炭素を主とする温室効果ガスの吸収、排出といった流れを調べています(写真4)。観測塔には実際登ることができ、ちょうど半分のあたり(地上およそ15m)まで登りました。このあたりでやっと葉が多くなる高さでした(成長過程で下の方の葉は光が当たらなくなり枯れるため)。少し雨が降っていて、光合成はしていなかったでしょうが、今まさに呼吸をして、成長している葉を見られ、いい体験になりました。

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写真3観測塔に登る前に三枝さん(右)から説明を聞きました

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写真4土壌から発生する二酸化炭素を測定するチャンバー

4. 大型降雨実験

これはCGERの活動とは直接関係ありませんが、研修期間中の8月28日、同じつくば市の防災科学技術研究所で行われた「大型降雨実験」に参加したので(写真5)、その時のお話もさせていただきます。300mm/hの豪雨を体験したのですが、この雨量は日本の瞬間豪雨記録である雨の強さに匹敵するそうです[注]。まさに土砂降りといった感じでした。また、実際には強風や雷が伴い、威力はさらに強まることでしょう。ここのところ、日本全土にわたって局所的な豪雨が続いていて、いつこのような雨に遭うとも限りません。私の住む地域では、これまで大きな被害にあったことはありませんが、気を引き締める機会になりました。

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写真51時間300mmの豪雨を体験

5. まとめ

私の学んだセンターの活動及び期間内の体験について述べてきましたが、この実習で私が特に感じたことは、最先端技術への驚きと興味、そして何より、研究員の方々が自分の研究について、本当に楽しそうに語っていたことでした。今後また、新しい研究方法や成果が出てくるのが楽しみでなりません。たくさんの方のお話を聞いたり、施設見学をしたりと、幅広い体験ができたことを嬉しく思っていると同時に、このような機会をいただけたことをとても感謝しております。

脚注

  • 日本での過去最多の短時間雨量は、2011年7月、新潟・阿賀町で観測された10分間に50mm。1時間に換算すると、300mmとなる。

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