2014年8月号 [Vol.25 No.5] 通巻第285号 201408_285010

【最近の研究成果】 米国南西部における2013年6–7月熱波に対する人為起源影響の分析

  • 地球環境研究センター 気候変動リスク評価研究室 主任研究員 塩竈秀夫

2013年6–7月に、米国南西部は激しい熱波に襲われた。フェニックスでは、気温が航空機の飛行が許される上限の47.8°Cを超えてしまった(48°C)ため、運航できなくなった。また熱波に関連した大規模な山火事によって19名の消防士の命が失われた。このような異常気象イベントが発生した場合に、人為的な温暖化がそのようなイベントの発生確率や強度にどのような影響を与えていたかを分析する研究が、近年注目を集めている。

我々は、気候モデルMIROC5を用いて、「人為的な地球温暖化を考慮した100例の気候再現実験」と「人為的な温暖化の影響を取り除いた100例の仮想気候実験」を実施した。前者の実験では、人間活動によって生じた、大気中の温室効果ガス濃度の上昇や、海面水温の上昇の影響が考慮されており、後者ではそれが考慮されていない。図に5例ずつの気温偏差を示す。温暖化の影響がある場合、100例中2例で観測されたような強度の熱波が現れた。一方で、温暖化の影響がない場合、観測されたような強い熱波は発生しなかった。両者の比較から、人為的な温暖化が熱波の発生確率を増大させたと評価された。

figure

観測(中段)、人為的な温暖化の影響を考慮した実験5例(上段)、人為的な温暖化の影響を除去した実験5例(下段)の気温偏差(°C)

本研究の論文情報

Attribution of the June–July 2013 heat wave in the southwestern United States
著者: Shiogama H., Watanabe M., Imada Y., Mori M., Kamae Y., Ishii M., Kimoto M.
掲載誌: SOLA, 2014, 10, 122-126, doi:10.2151/sola.2014-025.

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