2013年9月号 [Vol.24 No.6] 通巻第274号 201309_274005

地球環境モニタリングステーションが取り持つ地域交流

企画部広報室長 小口馨

北海道根室振興局・根室市の主催によるエコスクールが7月4日に開催されました。国立環境研究所地球環境研究センターは根室振興局の要請により、地元貢献の一環として1998年より参加しています。おもな対象は落石および落石近傍地区の小学校5,6年生で、落石小学校と、昆布盛小学校および海星小学校にて、交互に開催されています。今回は、根室市立落石小学校の5,6年生11人が元気よく参加しました。

今年のエコスクールは、国内2か所の地球環境モニタリングステーションの設置地域の交流を図る観点から、落石小学校と波照間小中学校によるネット交流会とステーション見学会を予定していましたが、当日は、あいにくの雨で見学会は中止となり、地球温暖化についての授業となりました。

開校式のあと、地球環境モニタリングステーションについて、町田大気・海洋モニタリング推進室長より人為的な影響を無視できる大気の高精度・自動無人観測を目指して、落石岬、波照間に設置したこと、両地域が日本および世界の温室効果ガス観測の重要な地域であることを説明しました。小学生たちは、自分たちの地域に誇りを持つとともに、その重要性を理解してくれたものと思います。

続いて、落石小学校と波照間小学校とのネット交流会を実施しました。交流会の開催に至った発端は、3年ほど前に地球環境モニタリングステーション—波照間—(以下「波照間ステーション」という。)の現地管理人を地球環境モニタリングステーション—落石岬—(以下「落石岬ステーション」という。)へ案内したときに、現地管理人同士が意気投合し交流を始められたことによります。そしてすばらしいことに、現地管理人同士の交流から、地元の小学校を介した地域の交流に発展したのです。交流会では、波照間小中学校と落石小学校双方から学校紹介、地域紹介等が行われました。地域紹介では、気温の話題が出て、交流時の落石小学校の気温が13℃であったのに、波照間の気温は31℃で、年間平均気温が22℃という説明に落石の一同は驚いていました。また、お互いにクイズを出し合い、それぞれの地域特性を楽しく理解し合うよい機会がもてました。日本は南北に長く、多様な文化、気候、生態系があることを理解することができたことでしょう。

photo. 落石小学校

波照間小学校と交信が開通した時の落石小学校の様子

一方、波照間小中学校では、5, 6年生が6人しかいなかったこともあり、交流会には3, 4年生も参加しました。波照間小中学校は、日本最南端の小中学校ということで全国各地からこのような交流の申し込みが多くあるそうで、生徒も先生も手慣れた様子でした。

交流が始まり落石小学校の生徒が画面に映ると、「なぜジャージを着ているのだろうか?」と、落石との気温差について実感できないでいるようでした。生徒たちはどの話題にも興味深げに画面を見ていましたが、中でも、根室市の納沙布岬にある北方領土返還を祈願したモニュメント「四島のかけ橋」の「祈りの火」が波照間島で採火されたものだという話には驚いていました。交流会に参加した生徒たちの多くは、地球温暖化問題についてまだ学習していませんでしたが、昨秋の波照間ステーション20周年記念イベントでの一般公開に参加した生徒もおり、この交流をきっかけに波照間ステーションや地球環境問題への関心が高まったことと思います。

photo. 波照間小中学校

落石小学校の説明に興味深く耳をかたむける波照間小中学校の子供たち

引き続き、根室市在住の北海道地球温暖化防止活動推進員の千葉精一さんが温暖化、循環型社会について授業を行いました。地球儀にラップをかけることで、地球温暖化のメカニズムをわかりやすく説明していただきました。

最後に、町田室長が、二酸化炭素(CO2)の季節変動は植物の光合成活動や呼吸活動の季節による違いに由来するため、一年中温暖な波照間に比べて冬に雪に閉ざされる落石ステーションの方が季節変動が大きくなるという説明を行いました。また、植物の葉が大きくなることは、光合成が活発に行われ大気中のCO2を植物が取り込み、蓄えることを意味しており、そのため大気中のCO2が減少するとの説明に、皆うなずいていました。CO2の動きを植物の成長に例えることで可視化することができ、地球温暖化を身近に感じてもらえたことでしょう。

photo. 地球環境の授業

町田室長、千葉さんによる地球環境の授業風景

以上のように、モニタリングステーションを通じて、国立環境研究所と地域の小学校、地球環境モニタリングスターション設置地域の交流が行われたことは、国立環境研究所の事業を理解いただくとともに、地域の多くの方々に環境問題に興味を持っていただく大変有意義な機会であったと思います。

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