2013年9月号 [Vol.24 No.6] 通巻第274号 201309_274004

地球環境豆知識 21 隔年更新報告書(Biennial Update Report:BUR)

地球環境研究センター 温室効果ガスインベントリオフィス 高度技能専門員 小野貴子

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隔年更新報告書(Biennial Update Report: BUR)とは、国連気候変動枠組条約(United Nations Framework Convention on Climate Change: UNFCCC)に加盟している開発途上国が、2年に1回の頻度でUNFCCCの下での締約国会議(Conference of the Parties: COP)に提出しなければならない報告書です。この報告義務は、2011年にダーバンで開催された第17回のCOP(COP17)の決定2で定められました。第1回のBURについては2014年12月までにCOPに提出すべきとされています。BURに含める情報は以下の通りです。

  • 国内事情、および継続的な国別報告書(National Communication:NC)の作成に関連した制度的取り決めについての情報
  • 人為起源の温室効果ガス(GHG)排出・吸収量についての国家インベントリ
  • 気候変動を緩和するための行動およびその効果についての情報
  • 気候変動対策に関して財政、技術および能力向上に必要な事項、および受領している支援についての情報
  • BURの作成および提出を可能にするために受領している支援のレベルについての情報
  • 国内的な測定・報告・検証(Measurement, Reporting and Verification:MRV)についての情報
  • その他当該国が条約の目的達成に関連していると考え、かつBURに含めるにふさわしいとみなした情報

UNFCCCに加盟している全締約国は、UNFCCCの第4条1および第12条に基づき、自国のGHG排出・吸収量および気候変動政策に関する情報をCOPに提出する義務を負っています。この規定に基づいて全締約国からそれぞれCOPに提出されるものがNCです。また、条約発効から時を経て、かつCOPでの協議が深まるにつれ、第12条に列挙されている提出すべき情報をより詳細により頻繁に提出することが要求されるようになりました。ただし、この義務に基づいて報告しなければならない情報量と報告頻度は先進国と途上国で異なっています。

条約締約国である先進国と途上国がCOPに提出しなければならない報告書

  提出しなければならない報告書 頻度
先進国 国別報告書(National Communication: NC) 4年に1度
隔年報告書(Biennial Report: BR) 2年に1度
国家温室効果ガスインベントリ 毎年
途上国 NC 4年に1度(推奨)
隔年更新報告書(Biennial Update Report: BUR) 2年に1度

途上国は、先進国ほどの頻度および情報量で自国のGHG排出・吸収量および気候変動政策に関する情報をCOPに提出する義務を負っていませんが、それでも今後は以前より頻繁かつ詳細に情報を提出することが必要になりました。例えば温室効果ガスインベントリに関しては、COP17の決定2でBURにおける報告事項の一つとしてインベントリの定期的な提出の義務が課せられる前までは、途上国はインベントリをNCの一部として不定期にCOPに提出していました。その頻度は途上国各国の国内事情によってさまざまですが、平均的には10年に1度程度の頻度でした。提出については、現在までに第2回のNCを提出している国が一番多い状況にあります。しかしながら途上国は今後NCに加えて、2年に1度の頻度でBURをCOPに提出する義務を負うことになり、その義務化に伴いBURの一部であるインベントリも2年に1度のタイミングで更新しCOPに提出しなければならなくなりました。また、今まで不定期に提出していたNCについても、カンクンで行われたCOP16の決定1によって4年に1度提出することが強く推奨されることになりました。

上述の内容を含んだBURを隔年の頻度で定期的にCOPに提出するためには、報告書提出までの一連のプロセス(国内関係機関からの情報収集、情報を基にした報告書の編纂、編纂した報告書の内容に対する国内関係行政機関による承認、承認された報告書のCOPへの提出、など)を定期的かつ円滑に実施することが必要であり、その実施のためには各途上国において安定した国内組織間協力の仕組みを構築することが必要となってきます。

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