2012年12月号 [Vol.23 No.9] 通巻第265号 201212_265006

環境問題を身近に! 「エコメッセ2012 in ねむろ」

地球環境研究センター 観測第二係長 林大祐

去る平成24年10月27日(土)に北海道根室市において「エコメッセ2012 in ねむろ」が開催され、北海道根室振興局や根室市とともに、根室市落石に「地球環境モニタリングステーション—落石岬」を有する国立環境研究所も主催者の一員として参加しました。

「エコメッセ2012 in ねむろ」とは、北海道根室振興局が主体となって根室管内の住民を対象に2009年度から開催しているイベントで、リサイクル製品の紹介や体験型の環境学習会により地球温暖化等の環境問題を身近なものとして認識していただき、地域住民による環境保全への行動の推進に資することを目的に行っているものです。

今回で3回目(2011年度は未実施)の開催となるのですが、国立環境研究所も当初から参加しているため、3回目の参加となりました。

エコメッセは、午前・午後の2部構成となっており、午前は国立環境研究所の観測施設である「地球環境モニタリングステーション—落石岬」の見学会、午後は根室市総合文化会館での展示会および環境学習会が行われました。

午前の部のステーション見学会には、14名の根室市民の方々が参加されました。

ステーションのある落石岬は、根室市街地から南西に約20km下った根室半島の太平洋側に面した小さな岬です。自動車が入れるのは岬の途中までで、そこからステーションまでの約2kmは徒歩での移動となります。

photo. ステーションへ向かう

ステーションへ向かう参加者(ここは車の乗り入れが制限されています)

北海道の10月下旬といえば、紅葉シーズンも終盤でそろそろ冬支度が始まる時期なのですが、当日の落石岬は素晴らしい快晴で、ステーションに到着する頃にはうっすらと汗ばむほどの陽気でした。落石岬でここまで風のない穏やかな日は非常に珍しいと参加者の方々も驚いておられました。

落石岬は、落石湿原や天然記念物のサカイツツジなどの自然豊かな風景を堪能できるため、「おちいし岬パス」という歩行者専用道(フットパス)が整備されており、落石岬を1周できるようになっています。今回の参加者の中にもフットパスを踏破された方が複数名おられ、健脚ぶりを発揮されていました。

ステーションの設置目的は、人間活動による影響をほとんど受けない清浄な状況下における二酸化炭素やメタンに代表される「温室効果ガス」の大気濃度(ベースライン濃度)を観測することであり、設置場所の選定にあたっては近くに住居や工場等がないことが求められたことから、この条件に合致する落石岬が選ばれました。同様の施設は沖縄県の波照間島にもあり、これら2地点で観測することで緯度による違いや地域特有の大気の輸送による違いも把握することができます。

ステーションの敷地は結構広いのですが、観測小屋の屋内・屋外ともに観測に必要な機器類が所狭しと並んでいます。普段は一般に公開していないため、参加者の皆さんは興味津々で、説明を担当した町田室長や坂川係長の説明を聞いておられました。町田室長より「石油やガソリン等の化石燃料の燃焼により、落石岬における温室効果ガス(CO2)濃度についても、観測開始年から現在まで右肩上がりに上昇している」と説明したところ、参加者からは「急激な経済成長で環境悪化が進んでいる中国大陸からの大気の影響はないのか?」など多くの質問が飛び交い、中には熱心にメモを取りながら説明を聞いている方もおり、環境問題への関心の高さを感じました。空気が綺麗な根室だからこそ、余計に関心があるのかもしれません。

photo. 体験実験

海水に息(CO2)を吹き込んで、海洋酸性化の体験実験

photo. 分析機器

ステーション内に設置された各分析機器の役割を説明

photo. 太陽光パネル

ステーションの電力の一部をまかなう太陽光パネルの説明

photo. 観測機器

ステーションの屋上に設置されたエアロゾルサンプラー等の各観測機器の役割を説明

photo. 観測タワー

大気の採取や温度・風速等を測っている観測タワーの説明

温室効果ガスのモニタリング調査では、時間の経過に伴う環境の変化や傾向を把握するために長期間の継続的な観測が必要となります。ステーションでの観測は無人で行っていますが、定期的なメンテナンスやランニングコストに対する人員や予算の確保とともに地元のサポートがなければ成り立ちません。1995年から開始された観測が現在も継続できているのも、地元根室市をはじめ、数多くの関係者のご理解、ご協力があってのことだと感謝しなければいけないと思いました。

午後からの展示会では、国立環境研究所のほかにも株式会社明治根室工場、根室消費者協会、社会福祉法人希望の家、東盛建設株式会社、株式会社バイオマスソリューションズなどの団体が参加し、北海道認定リサイクル製品の紹介やマイ箸・ストラップ作り等の体験コーナーが出展されるなど、充実した内容となりました。

photo. エコメッセ看板

根室市総合文化会館に掲げられたエコメッセ看板

(株)明治のブースでは、牛乳パックのリサイクルに関するパネル展示や、牛乳パックを溶かしたパルプをすいて絵はがきを作るという体験ができました。出来上がった絵はがきは素朴な風合いで、参加者からは「簡単に作れて楽しい!」との感想がありました。

photo. (株)明治 体験コーナー

(株)明治では牛乳パックのリサイクル状況に関するクイズや牛乳パックから絵はがきを作る体験コーナーを出展

国立環境研究所は根室振興局が出展した自転車による発電体験の協力を行いました。発電機は接続した電化製品の消費電力量に比例して負荷がかかる(ペダルが重くなる)仕組みになっており、普段何げなく使っている電化製品がどれだけの電力を消費しているのかを参加者に体験していただきました。

たとえば、同じ60W相当の明るさの電球でも、LED、蛍光灯、白熱球という3種類の消費電力の違いや、最新型のLED液晶テレビの消費電力の小ささを実感していただけたと思います。「いま使っている白熱球を買い替える時には、LED電球や蛍光灯を選びます」と宣言していただいた参加者もおられました。

photo. 自転車発電

自転車発電体験の参加者の多くは、白熱球の消費電力の大きさ(ペダルの重さ)に驚かれていました

現在の主要な発電方法である火力発電では、化石燃料を燃やし、二酸化炭素を排出しながら電気を作っていますので、消費電力が小さければ小さいほど環境にやさしいということになります。そのため、次に電化製品を買い替える際には、消費電力の小さいものを選択することで環境負荷の軽減に貢献できることを思い出していただければ幸いです。

このように市民レベルで無理なく参加できる地球温暖化対策を広めるために、エコメッセのようなイベントは重要であり、環境問題を担当する研究機関として今後も積極的にかかわっていきたいと思いました。

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