2011年10月号 [Vol.22 No.7] 通巻第251号 201110_251008

自己紹介:地球環境研究センターの特別研究員 中道久美子

地球環境研究センター 特別研究員 中道久美子

photo. 地球環境研究センター 特別研究員 中道久美子

私は2009年4月より地球環境研究センターの山形与志樹主席研究員のもとで特別研究員として研究を行っています。出身は愛媛県で、大学院で博士課程を修了した後、国立環境研究所に来ました。

幼い頃から、環境や共生という言葉に関心を抱き、このまま人間の好き勝手にしていては地球がもたないのではという危機感を抱いていました。高校の頃からは、都市の構造自体を改変して環境負荷を軽減する必要があると考え、大学では、都市・地域計画にも関わる土木工学系の学科に進学しました。修士課程では、全国の住宅地を歩き回って写真を集め、膨大なデータを分析し、その成果は図鑑としても出版しました[注]。それらのデータを活用して都市構造シナリオの評価モデルを構築し、博士課程では、コンパクトシティ整備を通じた交通環境負荷低減策について研究を行いました。コンパクトシティとは、人口増加の時代に都市の郊外部を開発し自動車に依存してきたような住まい方を見直し、都心や駅周辺などの一定の地域で徒歩や公共交通で暮らせるまちづくりを進めることで、交通環境負荷を低減することが期待されている都市構造です。私の所属した研究室では初の博士課程進学者であったため、先輩もおらず戸惑いも多く苦労もありましたが、いい経験になりました。

国立環境研究所に着任後は、大学で研究してきた交通による環境負荷だけでなく、家庭部門、業務部門、産業部門からの二酸化炭素排出量にも着目し、全部門を統合した市区町村別の排出量をマッピングしました。二酸化炭素排出量を考える際、一般的にはエネルギー転換や製造、運輸などに伴う二酸化炭素は、その排出場所で排出されると考えます(直接排出量)。しかし、生産されたエネルギーや製造物などを、使用するユーザー側(企業や家庭、交通利用者など)にそれぞれの消費量に応じて割り付ける間接排出量という考え方も、排出責任という意味では重要です。そこで、マッピングを行う際には、この直接排出量と間接排出量の両面から推計することを試み、現在、その推計をさらに厳密に行う研究を進めています。

このような現状分析だけではなく、将来への影響も把握するため、環境省地球環境研究総合推進費S-5「地球温暖化に係る政策支援と普及啓発のための気候変動シナリオに関する総合的研究」というプロジェクトの中で、気候モデルの研究者と連携し、人間活動によって生じる熱などを通じた、気候への影響を調べる研究にも携わっています。また、現在、注目が集まっている風水害に関しても、文部科学省気候変動適応研究推進プログラムの課題の中で、コンパクトシティを含む低炭素化社会と、気候変動へ適応した社会との両方を同時に実現するためのシナリオの作成にも取り組んでいます。

国立環境研究所には、地球環境問題に関わる幅広い分野の研究者がいて、大学で専攻してきた分野以外にさまざまな専門分野を学ぶことができます。勤務してすぐの頃は、都市構造の変革が「土地利用」という言葉で置き換えられ、人間活動も不確実性要素の一つと聞いて衝撃を受けたのを覚えています。自分の視野の狭さに気づき、世界が広がるとともに、広がりすぎて私には処理しきれていない部分もありますが、少しずつでも学びながら研究を進めていきたいです。

つくばに来て、まず、一つひとつの街区が大きく、地図で見たときと実際のスケール感が違うことに驚きました。各研究所が敷地を広めに取っていることも理由にあると思いますが、徒歩や自転車で暮らしやすいまちではないなと感じました。ジオラマで見るとエリア分けなどもきれいですが、実際には、今までに見たことのない人工的で無機質なまち、というのが正直な印象でした。一方で、雑木林や公園、野菜直売所なども多く、「豊かさ」について考え直すきっかけにもなりました。また、初日から通勤時には外国人の方に話しかけられ、職場に着いても両隣が外国人で、普通に英語が飛び交っていることにも驚きました。私は日本語ですら人前で話すのが苦手なくらいですが、上達できるよう頑張りたいです。実家も遠く、つくばには知り合いもいなかったため、最初は戸惑いましたが、同好会などを通じて友達もでき徐々に慣れてきました。プライベートでは、いろいろと大変な時期もありましたが、そのぶん、周りの人の優しさを感じることができました。まだまだ試行錯誤の毎日ですが、大好きな愛媛県や社会に少しでも貢献できるよう努力したいです。

脚注

  • 谷口守, 松中亮治, 中道久美子 (2007) ありふれたまちかど図鑑 —住宅地から考えるコンパクトなまちづくり—. 技報堂出版.

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